税理士の仕事内容を完全解説【独占業務・付随業務・年収・1日のスケジュール】2025年最新版

税理士の仕事内容概要

税理士は、税務・会計の専門家として企業や個人の税務業務をサポートする国家資格者です。税理士法第2条に基づき、税務代理・税務書類の作成・税務相談という3つの独占業務を行うことができます。📚 出典:税理士法第2条

2025年9月末時点での税理士登録者数は82,034人です。📚 出典:日本税理士会連合会「税理士登録者数」2025年9月末このうち、開業税理士（独立開業して事務所を持つ税理士）が約70%を占めており、税理士は独立開業に適した資格といえます。

税理士の登録者数は年々増加傾向にあります。2024年3月末の登録者数は81,280人で、前年度から588人増加しました。新規登録者2,725人のうち、試験合格者は647人（23.7%）、試験免除者は1,497人（54.9%）、公認会計士有資格者は522人（19.2%）となっています。📚 出典:日本税理士会連合会「令和5年度登録事務事績」2024年

税理士試験を経て資格を取得する者だけでなく、税務署勤務経験者（国税OB）や大学院での学位取得による試験免除者、公認会計士からの登録など、多様なルートで税理士が誕生しています。

税理士の3つの独占業務

税理士法第2条第1項には、税理士の独占業務として以下の3つが明文化されています。これらの業務は税理士でなければ行うことができず、違反した場合は税理士法違反として罰則の対象となります。

独占業務① 税務代理（税理士法第2条第1項第1号）

税務代理とは、納税者に代わって税務署等に対する手続きを行う業務です。具体的には以下のような業務が含まれます。

• 申告書の提出代理:確定申告書、法人税申告書、消費税申告書などを納税者に代わって税務署に提出
• 税務調査の立会:税務署の調査が入った際に納税者の代理人として立ち会い、説明や交渉を行う
• 不服申立の代理:税務署の処分に不服がある場合、異議申立てや審査請求を代理
• 税務署との交渉:納税猶予、分割納付などの交渉を代理

税務調査は企業にとって大きな負担となるため、税理士が代理人として立ち会うことで、適切な対応と納税者の権利保護が可能になります。

独占業務② 税務書類の作成（税理士法第2条第1項第2号）

税務書類の作成は、税理士業務の中核をなす業務です。具体的には以下のような書類の作成が含まれます。

• 所得税確定申告書:個人事業主や給与所得者の確定申告書
• 法人税申告書:法人の決算に基づく法人税申告書および別表
• 消費税申告書:課税事業者の消費税申告書
• 相続税申告書:相続が発生した際の相続税申告書
• 贈与税申告書:贈与を受けた際の贈与税申告書
• その他の税務書類:青色申告承認申請書、各種届出書など

これらの書類は税法に基づいて正確に作成する必要があり、誤りがあると加算税などのペナルティが課されるため、専門家である税理士に依頼するケースが多くなっています。

独占業務③ 税務相談（税理士法第2条第1項第3号）

税務相談とは、税金に関する具体的な相談に応じる業務です。具体的には以下のような相談が含まれます。

• 節税対策の相談:合法的な節税方法のアドバイス
• 税額計算の相談:どのくらいの税金がかかるかの試算
• 税制選択の相談:青色申告・白色申告、簡易課税・原則課税などの選択
• 事業承継税制の相談:相続税・贈与税の対策
• 組織再編の税務相談:M&A、会社分割などの税務面でのアドバイス

税務相談は、単に質問に答えるだけでなく、納税者の事業内容や財産状況を理解した上で、最適な税務戦略を提案することが求められます。

付随業務と新しい業務領域

税理士は、税理士法第2条第2項に基づき、独占業務に付随して以下のような業務を行うことができます。

付随業務の具体例

1. 財務書類の作成

試算表、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書、付属明細書などの財務諸表を作成する業務です。これらの財務書類は、企業の経営状態を把握するために不可欠であり、金融機関への提出や経営判断の資料として使用されます。

2. 会計帳簿の記帳代行

企業の日々の取引を会計帳簿に記録する業務です。小規模事業者では自社で記帳する余裕がない場合が多く、税理士が記帳代行を行うケースが一般的です。最近ではクラウド会計ソフトの普及により、リアルタイムでの記帳代行も可能になっています。

3. 会計参与（会社法第374条）

2005年の会社法施行により新設された制度で、税理士または公認会計士が会社の機関として参加し、取締役と共同で計算書類を作成する業務です。📚 出典:会社法第374条会計参与は、財務諸表の信頼性を高める役割を担います。

4. 税務訴訟の補佐人（税理士法第2条の2）

2002年の改正税理士法により新設された制度で、租税に関する訴訟において、弁護士である訴訟代理人とともに裁判所に出頭し、陳述することができます。📚 出典:税理士法第2条の2税務の専門家として弁護士を補佐し、納税者の権利保護に貢献します。

新しい業務領域

近年、税理士の業務は多様化・高度化しており、以下のような新しい業務領域が注目されています。

1. 経営コンサルティング

「いかに赤字を黒字にするか」「売上を上げるには」など、経営面・財務会計面・税務面からアドバイスを行う業務です。事業計画の策定、決算分析、業績向上のサポートなど、付加価値の高い業務として需要が高まっています。

2. 国際税務

グローバル化に伴い、日本企業の海外進出や海外企業の日本進出が増加しています。国際的な税務に精通したスペシャリストの需要は非常に高く、大手税理士法人を中心に国際税務部門が拡大しています。語学力と国際税務の知識が必須となります。

3. ファイナンシャルプランニング

起業家や個人に対し、収入、借入れ、家族構成、保有資産などを基に、人生設計やライフプランを総合的にアドバイスする業務です。ファイナンシャルプランナー（FP）資格と組み合わせてサービスを提供する税理士も増えています。

4. 相続・事業承継支援

相続税、遺産分割、遺言、財産評価、納税方法などに関する相談から申告までを支援する業務です。高齢化社会を背景に需要が急増しており、相続税を専門とする税理士も増加しています。事業承継においては、後継者育成やM&Aを含めた総合的な支援が求められます。

5. IT・会計システム導入支援

企業の会計システムや情報システムを構築し、電子申告（e-Tax）導入などを推進する業務です。ITコーディネータ資格と組み合わせてコンサルティングする税理士も増えています。クラウド会計ソフトの普及により、リモートでの税理士業務も可能になっています。

6. CFO（最高財務責任者）業務

クライアントの規模が大きくなったり、IPO（株式公開）を目指している企業には、キャッシュフローや経営計画策定など財務・会計のスペシャリストが必要不可欠です。顧問税理士が企業のCFOに迎えられるケースも増えています。

7. 資金調達支援

金融機関の審査に対し、事業内容、収益構造、借入金の返済方法等を明確に示し、資金調達を円滑にする支援を行います。事業計画書の作成や金融機関との交渉も含まれます。

8. 給与計算・人事労務支援

税理士は社会保険労務士と提携して業務を行うことが多く、給与体系や給与計算、社会保険、採用、助成金などのアドバイスを行う事務所も多数存在します。

税理士の1日のスケジュール

税理士の1日のスケジュールは、開業税理士か勤務税理士か、また繁忙期か閑散期かによって大きく異なります。ここでは、典型的な1日のスケジュール例を紹介します。

開業税理士の1日（通常期）

勤務税理士の1日（通常期）

繁忙期のスケジュール

税理士業界には明確な繁忙期があります。

• 12月〜3月:個人の確定申告シーズン（特に2〜3月が繁忙）
• 5月:3月決算法人の申告期限
• 11月〜12月:年末調整シーズン

繁忙期は連日深夜までの残業となることも多く、土日出勤も珍しくありません。一方で、閑散期（4月、6月〜10月）は比較的余裕があり、研修や新規クライアント開拓に時間を割くことができます。

税理士の働き方とキャリアパス

税理士には多様な働き方とキャリアパスがあります。自分のライフスタイルやキャリアゴールに合わせて選択できるのが税理士の大きな魅力です。

主な働き方

1. 独立開業（開業税理士）

自分の税理士事務所を開業する働き方です。税理士登録者の約70%が開業税理士であり、税理士は独立開業に最も適した資格の一つといえます。

メリット:

• 収入の上限がない（実力次第で高収入が可能）
• 自分のペースで働ける
• クライアント選択の自由がある
• 定年がない

デメリット:

• 初期投資が必要（事務所賃料、設備費など）
• クライアント獲得に時間がかかる
• 収入が不安定（開業初期）
• すべての責任を負う

2. 税理士事務所・会計事務所勤務（勤務税理士）

他の税理士が経営する事務所に勤務する働き方です。税理士試験合格後、まずは勤務税理士として経験を積む人が多数派です。

メリット:

• 安定した給与が得られる
• 実務経験を積める
• 独立開業の準備期間として活用できる
• クライアント対応の責任が軽い

デメリット:

• 収入の上限がある
• 繁忙期の残業が多い
• 事務所の方針に従う必要がある

3. 税理士法人勤務

税理士法人（複数の税理士が共同で設立した組織）に勤務する働き方です。大手税理士法人では大企業や上場企業をクライアントとするため、高度な専門知識が身につきます。

特徴:

• 大規模案件に携われる
• 専門分野（国際税務、M&Aなど）に特化できる
• 給与水準が高い（大手の場合）
• 福利厚生が充実

4. 企業内税理士

一般企業の経理部門や財務部門に勤務する税理士です。近年、企業内税理士の需要が増加しています。

メリット:

• 残業が比較的少ない
• 安定した雇用
• 一つの企業の税務を深く理解できる
• 繁忙期のストレスが少ない

5. その他の働き方

• 金融機関勤務:銀行や証券会社で税務アドバイザーとして活躍
• コンサルティングファーム:経営コンサルティング会社で税務コンサルタントとして勤務
• 会計参与:企業の機関として財務諸表作成に関与
• 企業役員:取締役、監査役、CFOとして経営に参画
• 資格学校講師:税理士試験の講師として後進を育成

キャリアパスの例

【パターン1】独立開業を目指すキャリア

25歳: 税理士試験合格
25〜30歳: 中小税理士事務所で実務経験（5年）
30歳: 独立開業
30〜40歳: クライアント数拡大（50社程度）
40歳〜: 安定経営、スタッフ雇用

【パターン2】大手税理士法人でスペシャリストを目指すキャリア

25歳: 税理士試験合格
25〜30歳: 大手税理士法人で国際税務経験
30〜35歳: マネージャーに昇格
35〜40歳: シニアマネージャー・パートナー候補
40歳〜: パートナー就任

【パターン3】企業内税理士からCFOへのキャリア

25歳: 税理士試験合格
25〜30歳: 税理士事務所で実務経験
30〜35歳: 上場企業の経理部に転職
35〜40歳: 経理部長・財務部長
40歳〜: CFO（最高財務責任者）就任

税理士の年収・給料データ

税理士の年収は、働き方（開業・勤務）、年齢、地域、専門分野によって大きく異なります。ここでは、各種統計データから税理士の年収を詳しく見ていきます。

開業税理士の年収

開業税理士の年収は、クライアント数や顧問料によって大きく変動します。日本税理士会連合会の「第6回税理士実態調査」によると、開業税理士の年収分布は以下の通りです。

開業税理士の約40%が年収1,000万円以上を得ており、高収入を実現している税理士が多いことがわかります。一方で、開業直後や小規模事務所では年収300〜500万円台の税理士も一定数存在します。

勤務税理士の年収

税理士事務所や税理士法人に勤務する税理士の年収は、経験年数や事務所の規模によって異なります。

勤務税理士の平均年収は500〜700万円程度ですが、大手税理士法人のマネージャークラスになると年収1,000万円以上も可能です。

企業内税理士の年収

一般企業に勤務する企業内税理士の年収は、企業規模や役職によって異なりますが、概ね以下の通りです。

• 中小企業:450〜700万円
• 大企業:600〜1,000万円
• 経理部長・財務部長クラス:1,000〜1,500万円
• CFO:1,500〜3,000万円以上

年収を上げる方法

1. 専門分野を持つ:国際税務、相続税、M&Aなど高付加価値分野
2. クライアント数を増やす:営業力・人脈を活かす
3. 顧問料を適正化する:サービス内容に見合った料金設定
4. コンサルティング業務を拡大:記帳代行だけでなく経営助言も
5. 複数の資格を取得:公認会計士、社労士、FPなど

税理士に求められるスキル

税理士として成功するには、税務・会計の専門知識だけでなく、多様なスキルが求められます。

必須スキル

1. 税務・会計の専門知識

税理士の基本となるスキルです。税法（法人税法、所得税法、消費税法、相続税法など）と会計基準（日本基準、IFRS）の深い理解が必要です。税制は毎年改正されるため、継続的な学習が不可欠です。

2. コミュニケーション能力

クライアントとの信頼関係構築、税務署との交渉、スタッフへの指示など、あらゆる場面でコミュニケーション能力が求められます。特に、複雑な税務を分かりやすく説明する力が重要です。

3. 正確性・注意力

申告書の作成では、小さなミスが大きなトラブルにつながります。数字の確認、法令の適用、計算の正確性など、細部まで注意を払う能力が必要です。

4. ITスキル

会計ソフト（弥生会計、freee、マネーフォワードなど）、税務ソフト、電子申告（e-Tax）、Excelなどの操作スキルは必須です。クラウド会計の普及により、ITスキルの重要性はますます高まっています。

差別化につながるスキル

5. 経営コンサルティング能力

単なる税務申告だけでなく、経営分析、事業計画策定、資金繰り改善など、経営全般のアドバイスができると付加価値が高まります。

6. 語学力（英語・中国語など）

国際税務やインバウンド対応には語学力が不可欠です。特に英語はグローバル化が進む現代において重要性が増しています。

7. マーケティング・営業力

独立開業する場合、クライアント獲得のためのマーケティングや営業活動が必要です。ホームページ作成、SNS活用、セミナー開催などの施策が求められます。

8. マネジメント能力

スタッフを雇用する場合、人材育成、業務管理、組織運営などのマネジメント能力が必要です。

今後重要性が増すスキル

• データ分析力:ビッグデータやAIを活用した税務分析
• DXスキル:デジタルトランスフォーメーションへの対応
• サイバーセキュリティ知識:クライアント情報の保護
• SDGs・ESG知識:企業の持続可能性に関する助言

税理士業界の将来性

「AIに仕事を奪われる」「税理士は将来性がない」という声もありますが、実際のところ税理士の将来性はどうなのでしょうか。

税理士の需要は今後も続く

税理士の独占業務である税務代理・税務書類作成・税務相談は、税理士法によって保護されており、AIやロボットに完全に代替されることはありません。特に以下の理由から、税理士の需要は今後も続くと考えられます。

1. 税制の複雑化:税法は年々複雑化しており、専門家のニーズは高まっている
2. 高齢化社会:相続税・贈与税の需要が増加
3. グローバル化:国際税務の専門家が不足
4. 中小企業の経営支援:税務だけでなく経営全般のアドバイザーとしての役割

AIとの共存

AIは税理士の仕事を奪うのではなく、税理士の業務効率を高めるツールとなります。

• AIに置き換えられる業務:単純な記帳代行、定型的な申告書作成
• 人間にしかできない業務:税務相談、経営アドバイス、複雑な税務戦略立案、税務署との交渉

AIを活用することで、定型業務を効率化し、付加価値の高いコンサルティング業務に時間を割くことができます。これにより、税理士の役割は「記帳屋」から「経営パートナー」へとシフトしていくと考えられます。

業界の変化

税理士業界は以下のような変化が進んでいます。

• クラウド会計の普及:リモート業務が可能に
• 税理士法人の増加:個人事務所から組織化へ
• 専門特化:国際税務、相続税、M&Aなど専門分野への特化
• 高齢化:税理士の平均年齢上昇により、若手にチャンス

税理士登録者の高齢化が進んでおり、50歳代が最多の22.5%を占めています。📚 出典:日本税理士会連合会「令和5年度登録事務事績」これは、若手税理士にとってはビジネスチャンスが広がっていることを意味します。

よくある質問（FAQ）

税理士になるには

税理士になるための主な4つのルートを詳しく解説します。

ルート1: 税理士試験に合格する

最も一般的なルートです。5科目（簿記論、財務諸表論、税法3科目）に合格し、2年以上の実務経験を経て税理士登録ができます。

メリット:誰でも挑戦できる（2023年度から会計科目の受験資格撤廃）

デメリット:合格までに5〜10年かかることが多い

ルート2: 国税OB（試験免除）

税務署等に一定期間勤務し、要件を満たすと税理士試験の一部または全部が免除されます。

• 10年以上勤務:税法科目免除
• 23年以上勤務:全科目免除

ルート3: 大学院免除

大学院で税法または会計学の修士・博士の学位を取得すると、最大2科目が免除されます。

• 税法の大学院:税法科目2科目免除
• 会計学の大学院:会計科目2科目免除

ルート4: 他資格からの登録

公認会計士または弁護士の資格を取得すると、無試験で税理士登録ができます。📚 出典:税理士法第3条

関連情報

公式情報・参考リンク

• 国税庁 税理士制度
• 日本税理士会連合会
• e-Gov法令検索：税理士法

最終更新：2025年1月（2025年9月末登録者数データ反映済み）